内山川
とはいえ水量のある春の一時期はそれなりの渓相をみせてくれる。こうした渓流は今までにもよく見てきているので、いずれかならずやってみようと思っていた。そしてその日が来た。
雪はよく締まって歩くのに支障はない。県道28号線と361号線の中間から釣りあがる。ポイントは段差の深場。小渓流とはいえ護岸の上からだとすこし高くて4.5mの竿でも少し足らないところもある。
どの深場も魚がでそうで気が抜けない。でもでたのは2匹。まあこんなもんか。
県道361号線の橋より上流の段差下で2匹のイワナを出したが、もう一匹、重い手ごたえがあった。ところが手網をポーチから取り出そうとしたら柄が壊れてしまった。ならばと弱らせてとり込もうと時間をかけたのが良くなかった。バラシ。まあ重いといっても尺はなかったろう。
この先は河床までコンクリートで舗装された流れが続き、ポイントはない。やがて砂防堰堤にたどり着く。でもここも深場はなくポイントにならない。これを越えると、例によって平坦な流れが広がる。自然な流れがみえるところまで行こうと思った。するとまた高い砂防堰堤にたどり着いた。
この日最後の大場所だ。じっくり攻めたいところだったが、思いのほか寒い。日陰で、しかも瀑風が強い。この風で仕掛けがうまく飛んでくれない。しかも木の枝が上にあって穂先に接触する。オモリを追加して、竿を横に振って仕掛けを振り込む。何度目かにやっと狙った一点に仕掛けが落ちた。そして目印がモゾッとした動きをして、アワせるとズンッとした手ごたえ。ようし、来たッ!
しゃがんで竿やイトが枝に触れないように注意しながら魚をコントロールし、引き寄せる、つもりだったが、相手もさるもの、近づくとすぐに滝の方向に走る。こいつは速いし重い。
寒さでかじかむ手で柄のとれた手網をとりだし、下流に方向転換したタイミングに合わせ、ラウンディング。我が勝利。
ちゃんと測れなかったが、尺にすこし足らないかもしれない。でもまあ初釣りとしては上々。
この日はここまで。先はあるだろうが後日にとする。
内山川の左岸には未舗装の農道が通っている。それを利用して、前回の砂防堰堤上から釣りあがってみる。
堰堤上は平らな地形で、川はおだやかに流れている。ポイントとなる落差のある流れになるまで竿を出さず歩いていく。
川は二手に分かれる。どっちが本流かわからないが、まずは左の沢に入る。あとで地図を確かめるとこっちが内山川とわかった。
ただでさえ水量の少ない流れが半分になるのだから遡行はたやすい。ただ、こうも細い渓流にどれだけのイワナがいるかだが・・・。
以外にも反応はすぐに来た。小さいが、希望が持てる。
わずかな深みをこまめに拾っていく。なんか最近、こんな釣りばかりしているな、と、ぼんやり考えながら遡行していくと、道路が交差する先に砂防堰堤が立ちはだかる。この下で4匹のイワナが釣れた。
どれも片手でもてるサイズだが、まあこの流れの中での釣果ではまずまずとしとこう。
この先を行ってもよかったが、もう一方の流れが気になる。いったん合流地点に戻って遡行する。
陽のささない薄暗い中を、魚の気配のないのに釣りあがるのは、何とも言えない。
こっちにはイワナはいないな。そう思いかけていたときに、これが釣れた。
遡行を続けると、樹間から木漏れ日が差してきた。なんか急に雰囲気が変わった。光があると、こうも違うものか。
白い花が目に入る。ミヤマカタバミだ。以前、ピンクのミヤマカタバミはよく見たが、この辺では白が普通らしい。
森林の中に差し込む日の光は幽玄の世界を現出させる。日差しを受けた小さな花々は、どれもさっきとは打って変わって輝きを放つ。
いっとき竿をおいてデジカメを操っていたが、釣りに立ち戻る。
釣れた。だがなんだこれは。カタクチイワシか?それは釣れてくれたイワナに失礼だろう。敬意をこめてリリース。
これを最後に竿を収めた。
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