中条川
長野県栄村(下水内郡)塩尻。
新潟県境からはいって最初の渓流。栄大橋の下を流れているのが中条川だ。
その手前に大きく「トマトの国」とある。
誰もがトマトの産地か何かだと思ってしまうが、あまり関係ないらしい。栄村振興公社の説明では「トマトの原産国ペルーで「トマト」という言葉の中に、《太陽の子ども達》の意味があることから名付けられました。」とある。
長野県北部地震から5年たつのに、この渓流では工事が続いている。
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むかし信濃川出会いから、何度か釣りあがったことがあった。イワナを釣った記憶はあるが、たいていは徒労に終わっている。高い護岸のため入渓地点を見つけるのが面倒で、砂防堰堤もいくつかあり、それを越えるのにいちいち川から上がらなくてはならず、苦労のわりにめぐまれない釣り場と記憶している。
「トマトの国」のあたりで中条川は東入沢と西入沢に分かれる。この上流は両方とも急斜面となり、東入沢はほとんど滝場で、いつもここで納竿となった。もっとも今では大滝から下は工事現場で、当然釣趣はない。災害により、山の斜面がおおきく崩壊し、滝も砂防堰堤も跡形もなく流され、急坂の斜面を流れ落ちている。
崩落前の中条川と、下は現在の中条川の上流部崩壊地。
現在の西入沢と東入沢。かつてこのあたりで28cmを出しているが、いまはその面影もない。
それ以前のこの渓流の中流以上は、滝場の連続する急場で、それを越えると本格的な渓流となる。一度だけこの上流部に釣行したことがある。
「7月の末日。車止めゲート近くに駐車し、マウンテンバイクをとりだし、砂防堰堤建設用の道路を利用して一気に上流を目指した。
とはいえすでに利用されていない道なので、当然手入れはされていない。低木の生い茂る坂道を強引にかき分け、歯を食いしばりながら、ひと漕ぎひと漕ぎ登り、ついに広場にたどりついた。資材置き場に利用していたのであろう。でも今は単なる草地。せせらぎの音が聞こえる。ここから徒歩でヤブの中を行くと、やっと東入沢川にでた。
最初の一投目でイワナが釣れたので、これはイケるかと思われたのだが、その後は魚信が少なく、タフな釣行となった。
よく見ると草は踏まれ、地面には足を滑らせた跡がある。すでに何人も入っている様子だった。かなりきびしい登りを強いられるところなのだが、それでも源流イワナをもとめてここまで来る人達がいるらしい。
ポイントはあるが、反応がない。小さなイワナが走るが警戒心が強いようだ。
雪が残っている。スノーブリッジが川面を覆って、竿の出せない所もあった。そのそばにはコゴミが生えている。ここでは3ヶ月も季節が遅いのか。
これより先は入渓者が少ないのか、やっと釣れ出した。20センチをでない小物ばかりだが。」
01(平成13年)7.29
そして2016.06.12 日曜日
3:30、出発。すでに空は白み始めていた。
1時間後には工事現場に着き、自転車で滝下に向かう。先週の下見でアタリを付けていたコースを行く。
右の斜面を登り、滝の上部より高い位置から斜面を横に進む。苦労してオオイタドリのヤブを突破し、尾根に着くと、なんとピンクのリボンが枝についている。ルートがある!
この東入沢の、滝場の上のルートはよく知られていなかった。自分の知る限りこの釣り場を紹介したのは、「`97ヤマメの渓、イワナの渓」(廣済堂出版)しかないが、これには大滝の右を高巻くとある。以前はそれがどこにあるのかわからず、利用したことがなかった。それにこうも崩落したのでは消滅しているだろうと思っていた。しかしここをホームにする人はいるのだろう。しっかりとそれをまもっていたらしい。
下手な絵で申し訳ないが、大滝と右のルート。右の赤い線がそれ。
大きな岩石群の斜面を登るのは少々怖い。これを登り切り、左に行くとさらに急斜面を登ることになるが、色あせたトラロープが張られていて、これを利用できる。登り切ればもう滝上で、東入沢のせせらぎが聞こえる。
入渓は5:00頃だった。まだ日も差さず薄暗い川面に近づくと、浅瀬にいた魚影がいくつも走る。水が少なくて、すぐイワナに気付かれてしまう。でもまあ走るのはいずれも小物ばかりだ。気にせず釣りあがる。
中条川のイワナ。
あまり大場所といえるポイントがないので、小さな落ち込みを拾ってゆく。するとだいたいイワナが釣れる。魚影はあきれるほど濃い。目印にも飛びついてくるものもあるが、良型はエサを沈めないと掛かってこない。
やがて滝場に出る。
水量が少ないので滝は細く見える。この下の滝つぼで、この日唯一の尺物が出た。
この時点で釣果には満足していた。まるで僕が最初の入渓者であるかのようだった。
この滝の左を巻くことになるが、ここにもロープが下がっていた。これを越えると、もう一つの滝下に着く。
下の滝つぼで尺がでたのだから、ここでも・・・と期待したが、出たのは中型のイワナ2匹。エサを投入すると即座に反応があって、重い手ごたえが返ってくる。もう少し粘ればまだ釣れただろうが、どうも水の中でイワナがエサの取り合いしているみたいだった。それくらい魚はいるし、スレていない。
滝はこれが最後で、これを越えると平坦な流れとなり、イワナは走るがしばらく釣果はない。水量もさらに減り、釣りにくく感じる。
岩の下から飛び出してきたイワナ。水が澄み、浅いのでサイトフィッシングになる。
記憶は定かでないが、以前訪れたときの流域に至ったようだ。流れに変化があり、ポイントもはっきりしてきた。イワナも釣れだす。
あの時より早い時期に来ているのに、残雪もなければコゴミもない。今年が少雪ということもあろうが、やはりなにか記憶違いをしているのかもしれない。
川に覆いかぶさる倒木。必ずしも枯れていなくて葉を茂らせているので、その下にあるポイントには手が出せない。こういうところがいくつもあった。
毛バリも試してみた。よく反応したが、おおくは小物で、良型はそんなに釣れなかった。
先はまだ奥が深いが、流れがさらに細くなり、釣れるイワナも小型となってゆく。帰りのルートがないのだから時間に余裕をもって納竿とした。
ブナ林の中で。
ウラベニガサ
ギンリョウソウ
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