西之入川
新潟県柏崎市石曽根西之入。
国道252号線で、ここを通るたびに、やってみるか?と思っていた。
水量がそれなりにあるので、鯖石川から差したハヤくらいは釣れるんじゃないかと思っていた。
もう10年近くになるかな。実際に竿を出して、案の定ハヤの入れ掛かりを楽しんだことがあった。
一度はそれで満足し、それ以来足を向けることもなかったんだけれど、いつからか、
「仙人菊と岩魚の里西之入」
という看板が、バス停に掛かっていた。
イワナ・・・?どこにいるんだ?この川か?
やってみよう。以前はそんなに深くまで探索していない。地図で見ると、あの芋川や鬼沢川と同じく黒姫山を水源にしているようだ。釣趣がうずいた。
2013年春に一度、挑戦している。でも釣果なし。
鯖石川出合から、護岸で固められた下流域を、丹念に探っていった。
でもカスリもしない。ハヤすらでない。
遡り、集落を抜けるあたりから渓流らしいたたずまいを見せるようになるけれど、足元を見ると靴跡が多い。そして、釣り針が包装のまま落ちていた。何本かまだ残っている。
これほどはっきりと先行者の跡があったんでは、むりもない。川沿いの細い道路わきに黒い軽自動車も停まっている。この日は潔くあきらめた。
そして今日、一番竿を期してやってきた。4月の上旬、例年だと雪代で水量が安定しない頃だ。でも今年は残雪も多くはない。それに、この日は気温が低くて融雪はないと判断した。なにしろ、朝、雪が降ったくらいだ。
前回、あきらめて引き上げたあたりから竿を出す。
実はここ、10年近く前にハヤを釣ったポイントだ。
5月の連休日で、かなり気温の高い日で、帰りにクマザサのタケノコ採って帰ったと記憶している。
でもこの日は沈黙。まだ水温が低くてハヤは動かないのか、それともハヤはもう遡らないのか。
ハヤが遡上しなくなった渓流が、近年多くなっている気がする。
水量はちょうどいい。やはり寒いのが幸いし、雪代はそれほど影響していない。ただ若干の白濁はある。でもキジ餌なら問題ないだろう。
何でもないヘチの浅いところで出たのは、このおチビさん。
ヤマメとは、正直、意外だった。
次に出たのが26cmのイワナ。白濁した水色を映した白いイワナだ。ひとまずあの看板は間違ってないと確認した。
このあと、テンポよく魚信をとらえた。良型のイワナに交じってヤマメの小物が釣れる。この辺は鬼沢川に似ている。違うのは、人口の段差が少ないこと。この段差より先には、砂防堰堤はない。
イワナ20cm、23cm。
ヤマメ15cm、18cm。
この滝が西之入川の大場所。帰りにやろうと思って、素通りした。
事実上、初めてはいった処なので、攻めやすいポイントを拾い釣りしてゆこうと思ったのだ。
結果的にはこの大場所は手を付けず。大物がいたかもしれない。
すでに上流域と言っていいだろう。ここで25cmを釣りあげると、水が澄んできた。
左から濁った水が流れ込んでいる。陽が高くなってきているので、雪解けが始まっているのか。この水が下流を白濁させていたらしい。これより上流は清水となっている。
これまで好釣だったので期待したが、けっこう渋い。
小ヤマメが2匹釣れた。イワナの渓相になっているのにまだいるのか。
しばらく魚信なし。やっとある程度の大きさの淵で、イワナが出たけれど、サイズはまことに控えめだ。せっかく水質がよくなったのに、魚影もサイズも落ちている。
左右に何本か滝が見える。このまえ行ってきた久之木川の不動滝に似ているものもある。
小渓流ながら深い谷底を流れているので、支流はこのように滝となって合流するようだ。
名前はないのだろうか。地図を見てもわからない。
渓相はいよいよイワナ好みになってゆく。ほどよい段差がつづいて、落ち込みや小さな滝壺など、ポイントに事欠かない。
しかし思ったほど釣れない。釣れても20cm前後と小型化している。
でもひれの赤いのが釣れる。原種の棲むところまで来たのだろうか。
見上げると、稜線が低くなってきたように思える。
本来なら引き上げる時分だけれど、もうすこし上ってみるか。
竿をたたみ、残雪の斜面の上をひたすら歩く。
また滝が見えてきた。最源流まで到達したのだろうか。
近づいてみると、なんとそれも支流で、左に本流は続いている。
でも水はだいぶ減少している。最源流と言っていいだろう。
すぐ左上が平らになっている。耕地だと思い、上がってみると、やはり水田だった。
この高さに田んぼがあるとは。
それなら農道を通って帰れるだろうと思い、道を探すと、すぐわかった。
未だ厚い残雪の上を歩いてゆく。
見おろすと、なかなか雄大な光景が広がっている。
小渓流とはいえ、こんな谷底を歩いてきたのだな。
雪の道を歩いてゆくと、所々、コンクリート舗装された道がでている。歩きながら、ああこの道はあれか、と想像がついた。そして案の定、ここについた。最初に26cmを釣りあげたポイントだ。
この左から合流する支流も、細流ながら期待できそうだが、今日は時間がない。
結構よく歩いた。寒い日なのに大汗をかいての釣行だった。
小渓流なのに谷は深くて長い。本当なら食料を持ってくるべきだった。山の中で疲労するのは危険なこともある。
今回はそんなに奥にまで入るつもりはなかったのに、荒天の空が好天に変わったりしたものだから、つい欲を出してここまで来てしまった。
しかし疲れを感じることはなかった。空腹もなかった。昼食をとらなかったのにも関わらずだ。
こうした経験は何度もある。いったいどこからこのパワーは出てくるのだろうか。
家に帰ってから、足とか肩の痛みに気づく。
夢中になって疲れを忘れている。子供と同じだな。われながら度し難い性格である。
以下おまけ。
アズマシロカネソウ。日本海側に多いのだそうだ。
コゴミ。上流に行くほどよく育っていた。
好天。
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=138.6233094316&latitude=37.25964235819
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